iPhone 3GSの速度比較〜高速化の最大の要因はキャッシュ

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アップルが、”全てが最大で2倍スピードアップ”、と宣伝する「iPhone 3GS」の速度を、歴代のiPhone・iPod touchと比較してみました。

iPhone 3GSがWWDCのKeynoteで発表された際、iPhone 3Gの2.1倍から3.6倍のパフォーマンスを出すというデータが提示されました。

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手にした方はすでに体験済みだと思いますが、iPhone 3GSの体感速度はそれを上回る場合があります。

そこで、ベンチマーク・アプリやWebサイトで、パフォーマンスの比較を行ってみました。

浮動小数点演算は1.4倍

コンピューターの処理速度を計測する際に使われる単位にMFLOPSという単位があります。

100万回の不動小数点演算を1秒間あたり何回行えるかを表すこの値を計測するアプリ「Diagnostics
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」を使って比較を行ってみました。

以下の比較は全て3回計測した値の平均値を使い、初代iPhoneを基準(1)としてその倍数でグラフ化。発売次期の早い順に左か並べています。(搭載しているOSが異なる点に注意)

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初代iPhone、初代iPod touchの値は約5.8MFLOPS。同じプロセッサーと駆動クロック(412MHz)を採用しているiPhone 3Gが、OSの違いからか約5.6MFLOPSと少し遅い結果になりましたが、誤差の範囲といえそうです。

クロック数が532Mhzに引き上げられた第2世代iPod touchは、基準となる初代iPhoneの約1.27倍。iPhone 3Gは1.35倍となりました。

iPhone 3GとiPhone 3GSで比較すると約1.4倍のパフォーマンスとなり、クロックの違い(600Mhz/412Mhz=1.46)がそのまま反映されています。

クロックの差以上のパフォーマンス

次に使用したのは、その名も『Benchmark
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』というiPhone・iPod touchのパフォーマンスを測定するアプリ。

10万個のオブジェクトを生成する時間でスコアを出すという簡易ツールですが、パフォーマンスを数値で出す数少ないアプリなので利用してみました。

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結果をみると、iPhone 3GSが非常に高い値を出していることが分かります。約13%クロックの違いがある第2世代iPod touchの、実に3倍以上の高い値を叩き出しています。

次にブラウザのJavaScriptの実行速度を計測する、”SunSpider“でパフォーンマンス比較も行ってみました。

本来はブラウザ同士パフォーマンスを計るために用いられますが、客観的な数値を出せることから採用してみました。

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JavaScriptのパフォーマンスがOS 3.0で飛躍的に向上したため、OS 2.2.1を搭載した機種との違いは明らかなのは当然と言えるでしょう。

注目すべきは、ここでもiPhone 3GSが突出して良い結果を出している点です。iPhone 3GとiPhone 3GSの結果は約2.8倍。クロックの差以上の開きがみられます。

3GSが速い最大の要因はキャッシュ

以前に第2世代のiPod touchをiPhone 3G速度を比較した際は、クロックの違いに比例した結果となっていました。

iPhone 3GSは新しいプロセッサー(Samsung S5PC100)を採用し、クロックを600Mhzに引き上げた以上のパフォーマンスが出ているようです。

その違いについて、キャッシュが原因ではないかという有力な情報をTwitter経由で知りました(情報・スクリーンショット提供ありがとうございました)。

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あらためてiPhone 3Gと3GSのプロセッサーを比較すると以下のようになります。

  iPhone 3G iPhone 3GS
プロセッサーコア S5L8900 S5PC100
駆動クロック 412 Mhz 600 Mhz
パイプライン段数 8 13
L1キャッシュ(命令・データ) 16 KB 32 KB
キャッシュ帯域 32 bit 64 bit
製造プロセス 90 nm 65 nm

特筆すべきは、キャッシュ帯域の拡張と倍増されたL1キャッシュで、処理速度の向上に大きく影響していると考えられます。

パフォーマンスの向上が単純にクロック数に比例しないのも、キャッシュの効果が出やすい処理とそう出ない場合があることで説明がつきます。

このキャッシュによる効率化に加えて、128MBから256MBに増えたメモリ、新しいグラフィックスコアなどによって、全体的な反応速度が改善し、ストレスのない使用感を実現しているようです。