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これまでにレビューをした書籍は解説書・開発者向けのものがほとんどでしたが、今回は少し趣を変えて、iPhoneと音楽について書かれた『iPhone×Music iPhoneが予言する「いつか音楽と呼ばれるもの」
』を購入してみました。

App Storeの音楽系アプリ100種類以上の解説とともに、それらのアプリやユーザーとiPhoneとの関わりから垣間見える、音楽の未来について、多数のコラムやインタビューを交えて模索した良書です。

このサイトでは、これまでほとんど音楽系のアプリをレビューしたことがありません。音楽の知識が乏しく十分にアプリの魅力を伝えることができないこと。また、よく理解せずにレーティング(★)を付けるのは、アプリ開発者の方へ失礼だとも思うからです。

iPhone向けの音楽系のアプリは、ギターやピアノなどの伝統的な楽器を”移植”したものにはじまり、ネットワーク越しに他のユーザーの演奏を聴けるものもあれば、周囲の騒音から音楽を合成するものまで、その種類は実に多岐に渡ります。

この本は、音楽の「かたち」は常に変化するもの、と読者に認識させ、現在も起きているその変化への、iPhoneが与えた影響について多角的に迫っています。

『iPhone×Music iPhoneが予言する「いつか音楽と呼ばれるもの」』 目次:

  • iPhone 音楽アプリケーションの生態系
  • iPhone の機能と音楽アプリケーションの関係
  • 第1章 iPhone の登場 – iPhone は音楽を変える?
  • 第2章 音楽アプリケーション – その可能性に迫る
  • 第3章  iPhone が提示する音楽の未来 – Audible Realitiesの実践
  • 第4章 インタビュー – コンテンツの消費形態と音楽概念の変化

第1章「iPhoneの登場」では、iPhoneの各種機能、App Storeによるアプリケーションの流通について簡単に解説。iPhoneを全く知らない読者でも、本書の内容が理解できるように配慮されています。

また、私たちの音楽の楽しみ方の変化についても触れ、

… 1世紀前の人々は一生の間にベートーベン5,6回も聴けたら上出来だった。それが今では、お望みならばいつでも何度でも交響曲5番を聴ける …(中略)… あらゆる芸術のなかでも音楽ほどテクノロジーの影響を受ける芸術ジャンルも他にないのかもしれない …

と、ふだん何気なく耳にしている音楽は、時代と共に変わっていることに気づかされます。

iPhoneの音楽系アプリを100種類以上ピックアップし、アプリによっては数ページをさいて実に詳細な解説を加えています。ミュージックの最先端で活躍する著者のレビューは示唆に富み、決してアプリのレビューがメインの本ではありませんが、この部分だけでもかなりのボリュームです。

センサーからの入力で音楽を合成する『RjDj』では、アプリの説明に留まらず、コラムでその内部構造であるプログラミング言語「Pure Data」にも踏み込んで解説。恥ずかしくもその存在さえ知らなかったので興味深い内容でした。

第3章では、iPhoneが音楽の「流通・消費」と「概念そのもの」へ与えた影響、そして音楽の未来像について迫っています。

音楽の消費については、ジャック・アタリの唱える4つの歴史区分、「儀礼の時代」「演奏の時代」「反復の時代」「作曲の時代」に触れ、

… このくるべき作曲の時代は、聴取体験が作曲、すなわち音楽の創作と不可分になる時代と考えられる …

とし、DJ、iTunesでプレイリストを作る、マッシュアップといった行為が、その時代の訪れを告げ、消費と生産(制作)の境目があいまいになるとしています。

本編に挿入されているコラムや、第4章のインタービューも読み甲斐があり、著者・編者の力の入れようが伺えます。

iPhoneの周囲から垣間見える音楽の未来について書かれていますが、決して「iPhoneってスゴい」という本ではありません。

テーマはあくまでより普遍的な「音楽の未来」であり、「iPhone」を「iPhoneのようなデバイス」と置き換えて読んでもよいかもしれません。

iPhoneユーザーはもちろんのこと、音楽とテクノロジーを愛するひと全てにお勧めできる1冊だと思います。

製品名 iPhone×Music iPhoneが予言する「いつか音楽と呼ばれるもの」
出版社 翔泳社
価格 2.079 円(税込)